第３回幼くして亡くした息子の口寄せ

子は親を想い、親は子を想うもの。その絆は生死を隔てても変わらないものであると私は考えます。実際、イタコの下には「死んだ子供の霊を降ろして欲しい、もう一度話がしたい」という方からのご依頼がとても多く、私の師であった恐山イタコも霊場に立っていた際にそんなご依頼をひっきりなしに受けてきたそうです。

電話占い王寺院もイタコに縁のある占い師や霊能者が在籍する電話占いですので、そういったご依頼が多数ございます。今回はそんなご依頼の一つをご紹介したいと思います。

ご依頼者の名は翔子さん。年齢は40代後半。鑑定の電話を受け取った時点で霊降ろしの口寄せをご希望されていることはすぐに分かりました。口寄せを希望する方は独特の念を帯びており、死者を想い、彼岸へと向かう波動を放っております。我々霊能者はその念を察し取ることができます。
私は無言のうちにその波動を読み取り、その先にあるものがお亡くなりになった息子さんであることを感じ取りました。どうやら息子さんは生まれつき病弱で、不幸にもわずか数歳ほどでこの世を去ってしまったようです。そして、翔子さんは母としてそのことを今でも悔いていらっしゃるようでした。自分にもっとできることはなかったのか、あの子は本当に幸せだったのか、と……。

見えたもの、感じたものをそのままお話すると、翔子さんは一瞬驚いた様子を浮かべた後、「はい、その通りです。やはりイタコの先生にはわかるのですね」と話して下さり、続いて「ずっと自分を責め続けてきました。息子を亡くしたのは自分のせいという風にしなければ受け止めきれなかったのです。でも、出来ればもう一回だけ息子と話がしたい。あなたはこの世に生きて幸せだったのか、と聞きたいのです。どうかよろしくお願いします」そう話して下さいました。

私はその気持ちに応え、翔子さんの念波動が向かう先、彼岸にある息子さんの霊体をこちら側に呼び寄せ、自身の身に降ろしました。すると胸の辺りが急に苦しくなってくるのを感じました。どうやら呼吸器系の御病気が原因でお亡くなりになったようです。お年はまだ小学校入学よりも前でしたが、霊体ははっきりとした意思を持っており、口寄せも十分可能でした。

「お母さん、僕すごく楽しかった」

口寄せで身体を貸し、息子さんが口を開いた第一声でした。それを聞いた瞬間、翔子さんは堪え切れずに号泣してしまったそうです。

「お母さんの息子に生まれて楽しかった。遊園地に連れてってもらったし、電車のおもちゃも買ってくれたし、好きなハンバーグもいっぱい作ってくれた。夜に眠れない時は本を読んでくれた。病院にも毎日来てくれた」

そう話す内容はすべて間違いなく息子さんと一緒に過ごした数年間のものだった。そう翔子さんは言っていました。

「お母さんはもう悲しまないで。僕は楽しかったから、僕の人生を悲しまないでよ」

そう言われて、翔子さんはハッとしたそうです。息子さんがあの数年の人生を幸せに感じていたのなら、私も息子と一緒に過ごした数年の時間を誇りに思わなきゃ。そう感じたそうです。

「わかった。ごめんね。ありがとう。愛しているわ」

嗚咽混じりにそう告げると、息子さんの霊はほほ笑んだような気配を浮かべ、そのまま彼岸へと戻っていきました。

口寄せを終えた翔子さんは、積年の悩みが解決し、実に晴れ晴れとしたご様子でした。「今までずっと後悔してばかりの人生でした。でもようやく前を向いて生きていけそうです。これからは息子の分も精一杯生きていこうと思います。本当にありがとうございました」そうおっしゃって下さいました。

※翔子さんには、掲載にあたりご協力いただきましたことを心より感謝いたします。また、お名前は仮名とさせていただきましたのでご了承ください。