イタコが教える、世にも恐ろしい霊体験

この世に生きていながら、神仏や霊界とも自在にコンタクトのとれるイタコ。どんな霊も太刀打ちできないほどの高い霊能力をもっているため、霊と対峙して危険な目に遭うことなど、そうはございません。しかしそんなイタコであっても、時には想像を絶する霊体験に遭遇することも……。鑑定中にイタコが体験した、世にも恐ろしい霊体験をご紹介いたします。

※除霊・浄霊済みですので、安心してお読みください。

第一回　青森県青森市／愛に迷った生き霊に狙われる

その恐ろしい霊体験は、電話占い王寺院に入った一本の電話からはじまりました。電話をかけてきたのは、青森県青森市在住の山下菜々緒さん（仮名）です。

実をいうと、私には今回の鑑定予約が入った段階で嫌な予感がしていました。思えばその時すでに、私の霊力をもってしても一筋縄ではいかない霊の存在を感じ取っていたのかもしれません。

「最近、黒い影を頻繁に見るようになりました。その影を見た後は、彼がケガをしたり、デートが中止になったりと、きまって彼氏に関する悪いことが起こるんです」

相談してきた山下さんの声は、こちらが気の毒になるほど震えていました。

霊視に入ると同時に私の瞳に飛び込んできたのは、フローリングの床を這って逃げまわる女性の姿。額を流れる一筋の血は、交際相手から殴られたことを物語っています。場面が切り替わり、今度は男性の怒鳴り声とともに女性の悲鳴が聞こえてきました。顔をよく見ると、この女性は電話をかけてきた山下さん自身です。

「貴女、DVを受けていますね？」

しかし驚いたことに、山下さんは否定してきたのです。

「イタコさん、そんなことはありません。彼はとても優しい人ですよ」

その言葉には嘘のかけらも感じられず、心底そう信じているのだということがわかりました。

嘘をついているときや邪悪なことを考えているとき、人の波動は乱れるものですが、彼女の波動はこのときまったく乱れていません。つまり、本人に嘘をついているという自覚がないということです。不思議に思った私は、電話口にいる彼女の生き霊を降霊して口寄せすることにしました。

彼女の生き霊は口寄せで泣きだし、私の口からは「彼のことが好き。でも彼が憎くてたまらない！」という苦悩の叫びがもれました。

まさしくそれは、彼女が心の奥底にしまい込んでいた魂の叫び。彼女は真実から目をそむけ、自分自身の心にも嘘をついていたのです。黒い影は、彼に対する愛憎の形をとった彼女の生き霊。だからこそ、彼女ではなく彼に悪いことが起こっていたのです。

このようなケースの場合は波動修正で彼のDV癖を排除した上で、彼女の魂を巣くっている憎しみの感情を浄化すれば、黒い影である生き霊も消滅するはずです。さっそく彼の波動を修正。その後、菜々緒さんに向けて光の波動を送り続けましたが、なかなか黒い影を取り除くことができません。あともう少しで成功すると思った矢先、私はおそらく油断していたのでしょう。浄化は失敗し、彼女の怒りや憎しみといった感情が大きな塊となって、私を襲ったのです。

私の体は大きな音をたてて壁にぶつかりました。灼熱の太陽のもとで何時間も歩き続けた後のように身体が急激に熱くなり、信じられないほどの喉の渇きを感じました。危険を感じた私は降霊を終了させようとしたのですが、彼女の念は私から離れてくれません。負の感情は生き霊となって彼女から離れ、私の体を乗っ取ろうとしていたのです。反対に、菜々緒さん自身は負の感情を手放したことで非常にすっきりとした様子です。彼女は私に感謝の言葉を述べ、鑑定は終了しました。

鑑定が終わっても、「憎い」「悔しい」という呟きはもれ続け、私の中で彼女の感情と私の感情が行ったり来たりという不安定な状態がしばらく続きましたが、そのうち生き霊は私の体を離れ、部屋を行ったり来たりし始めました。しかし相変わらず私の身体は熱いままです。顔を洗おうと洗面所に行って蛇口をひねると、そこから出てきたのは彼女の長い黒髪の束で、気づくと洗面所の床も彼女の長い黒髪で埋め尽くされていました。

ここまでくると、私一人の霊能力ではどうしようもありません。ほとんどなくなっていた力を振り絞って神仏霊を呼び出し、彼女の魂を癒していただくことにしました。私が真言を唱えると、光に包まれた神仏霊が白檀のような芳しい香りとともに現れ、温かな波動で空間は満たされていきました。そしてその瞬間、生き霊の表情は満足したように柔らかく光に溶けていったのです。

鑑定開始から6時間……。私はようやく生き霊から解放されたのです。イタコとしての経験が何年あって油断せず、その時々のケースに応じた霊術をもちいなければならない。そう痛感した鑑定となりました。